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大往生の方法<大阪医科大学 剣道部誌 第25号> 三好博文
私の勤務する病院は猪名川町にある。
しかしこの町がどこにあるかを知る人は少なく肩身の狭い思いをすることがある。
あるときバス旅行で玉造温泉へ行った。旅館で「どこからこられましたか?」との美人の仲居さんの質問に、説明が複雑なことと「田舎」と聞き間違われては大変と思わず「神戸」と答えてしまい、多少、気まずい宴会となった。
ところが我が町があることで俄に有名になった。
今年の3月頃、新聞に掲載された市町村別の平均寿命である。
なんと女性では3位。1位と2位が沖縄の村であったので、本土1ということになる。
ちなみに男性も全国で30位、兵庫県では1位であった。したがって猪名川町は男女ともに長寿の町であることには間違いが無い。
3万人くらいの人口で、大きな療養型病院が2つと、3つの高齢者施設の存在が大きく関係するのであろうが、猪名川町役場が長寿本土一などどいったプロパガンダを行わないのは不思議である。
正確な長寿順位とその数値を知るため厚生労働省のホームページを開いた。
日本人の死亡原因の1位は癌であり30%を占め2位が心疾患(20%)、3位が脳血管障害(15%)、4位が肺炎(7%)らしい。
以前からよく知られているデータであるが、これが死亡診断書の情報をまとめたモノとすると、決して長く悩んでいる疾患の順位ではない。
私の病院では多くの脳梗塞後患者(90%)が入院しているが、最後はほとんど急性心不全や併発した肺炎で死亡することが多い。
いずれ報告されると思うが、ある降圧剤の日本における大規模試験で経験された死亡の80%が脳血管障害、20%が虚血性心疾患であった。
この試験でエントリーされた患者は多分癌が除外されているだろうから、癌を除外すると、日本人の8割以上は脳血管障害を発症すると考えられる。
言い換えればこの疾患が日本の医療進歩の終着点となっているようだ。
とすると、私が毎日、このようにはなりたくないと思いつつ診ている片麻痺や痴呆の入院患者が、自分の未来の姿ではないかと思うと暗い気持ちになる。
どうも心筋梗塞や脳幹梗塞でぽっくりといくというような死に方は出来そうにもない。
人は必ず死ぬのであれば「寝たきりはいや」「呆けもいや」まして「癌で苦しむのもいや」というのは確率的に通用しそうにない。
数年前から、子供と伴に剣道をはじめ、週に2〜3回稽古を続けている。剣道は高齢者でも楽しめる素晴らしい日本文化のひとつであるが、剣道家は心疾患や脳血管障害に罹患しても
ぽっくり逝くことが多いようだ。しっかりしたデータは持ち合わせていないが、もしこれが全国の剣道家で有意に高い現象であるならば、剣道を続けようと思う理由の一つにしたい。
ただし剣道をするという介入試験は行えるはずもないのでエビィデンスを得ることができないのは残念である。
さてここで自分自身がどのような死に方をするかを考えてみた。
テレビドラマの影響で枕元に孫やひ孫が参集し、「しっかり、しっかり」などと励まされながら自宅で静かに死ぬなんて事は、間違っても考えるべきではないのだろう。
多分、剣道をとても理解する我が剣道部の先生方には納得頂けると思うが、最高齢で最高峰の昇段審査(8段)をパスした記念に海外旅行を企画。
飛行機ではねむれないのでハルシオン2錠を服用。ぐっすり眠ったところ偶々その飛行機は事故で墜落。
眠っている間に死亡した。というような非常に稀な可能性に期待している。
いまはもう剣道を止めてしまった次男にその旨を伝えたところ、「海外旅行は必ずお母さんと一緒にね。」と一言。
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